とうもろこし花の見分け方と受粉管理の秘訣

とうもろこしの花について調べ始めると、そもそも「とうもろこし」には花はある?という素朴な疑問や、「とうもろこし」の花の特徴は?のような基礎から知りたくなるものです。実際には「とうもろこし」の花のつくりは雄花と雌花が一株に分かれて現れる独特の仕組みで、「とうもろこし」の花が咲いたらどんな管理をするかが収穫の鍵になります。
見た目に花びらが少なく感じる理由や、意外と多彩なとうもろこしの花の色、歴史や文化に登場する「とうもろこし」の花偉人の逸話、そして栽培で欠かせない「とうもろこし」の雄花 雌花の役割まで、人気の理由が分かる要素はたくさんあります。
本記事では検索の疑問を一つずつ整理し、育て方や観察ポイントをやさしく解説します。
- とうもろこし花の基本構造と見分け方を理解できる
- 花びらが目立たない理由と風媒花の仕組みが分かる
- 開花後に行う管理と害虫対策の実務が把握できる
- 色や文化的背景から魅力を再発見できる
とうもろこし花の基本と魅力
- とうもろこしには花はある?
- とうもろこしの花の特徴は?
- 花のつくりと構造
- 花びらがない理由
- 偉人にまつわる話
とうもろこしには花はある?

とうもろこしは、イネ科トウモロコシ属(Zea mays L.)に属する一年生作物で、日本国内でも北海道から九州まで幅広く栽培されています。この植物には明確に花があり、一株の中に雄花と雌花が別々に形成される「雌雄異花同株」という形態的特徴を持ちます。
茎の最上部に形成される雄花は「雄穂(おすい)」と呼ばれ、数百から数千の小花が集まった穂状花序です。各小花の先端には花粉を蓄えた葯(やく)があり、開花期になると裂けて大量の花粉を放出します。
葉の付け根から出る雌花は「雌穂(めすい)」と呼ばれ、先端から長く伸びる糸状の部分が花柱(はなばしら)であり、一般に「ひげ」として知られています。ひげ一本が一粒のトウモロコシの種子と対応しており、ひげの柱頭に花粉が届くことで受精が行われ、子房内で種子が形成されます。
農研機構の栽培マニュアルによれば、とうもろこしの花粉は直径およそ90〜100マイクロメートルで非常に軽く、風によって数十メートル先まで運ばれることが確認されています。
このため、畑全体での交差受粉が促進され、粒のそろいが向上します。
花は見た目に派手さがないため見過ごされがちですが、栽培上は生育のサインを読み取る重要な指標です。雄花が開花して花粉を放つ時期と、雌花のひげが伸び始める時期が重なることで、自然条件下でも高い受粉率を確保できます。
見分けのコツ
雄花は株の最上部にふさ状に開き、晴天時に軽く触れると粉状の花粉が手に付着します。雌花は葉の間から斜めに伸びるひげが特徴で、出始めは黄緑色、受粉が進むにつれて徐々に褐色に変化します。この色の変化は受粉完了と粒の成長開始を示す指標として利用できます。
とうもろこしの花の特徴は?

とうもろこしの花は、昆虫による受粉ではなく風によって花粉を運ぶ「風媒花(ふうばいか)」です。このため、花は香りや蜜腺を持たず、昆虫を誘引するための大きく鮮やかな花弁もありません。代わりに、雄花は大量の花粉を効率よく空中に放出できる構造を持ち、雌花は空気中の花粉を最大限捕らえるための長い花柱を備えています。
雄花の開花は朝の時間帯に活発になり、特に乾燥した晴天の日には飛散距離が大きくなります。一方、雌花のひげは全方向に広がり、表面に微細な毛が密集して花粉を絡め取ります。この構造により、自家受粉だけでなく他株からの花粉も取り込みやすくなり、遺伝的多様性が確保されます。
米国農務省(USDA)の作物学データによれば、とうもろこしの最適な受粉条件は日中気温が25〜30℃、相対湿度が60〜80%程度とされています(出典:USDA National Agricultural Statistics Service)。
この条件下では花粉の発芽率が高く、花粉管の伸長も速やかに進みます。
また、風通しの良い圃場では花粉が効率的に移動し、粒の欠落(いわゆる歯抜け)の発生率が低くなります。これに対し、密植や風の遮断がある場所では花粉が十分に届かず、受粉不良が起きやすくなるため、栽培計画段階から配置や間隔の工夫が求められます。
花のつくりと構造

とうもろこしの花は形態学的に見ても精緻な構造を持っています。雄花は「雄穂」として茎の頂部に形成され、複数の小穂(しょうすい)が左右対になって配置されます。
各小穂には二つの小花が含まれ、その外側を苞(ほう)が包みます。小花の内部には雄しべがあり、先端の葯(やく)が裂開して花粉を放出します。
雌花は「雌穂」として葉の付け根に形成され、硬い苞葉に包まれた小穂が密集します。各小穂に並ぶ花の子房からは一本ずつ花柱(ひげ)が伸び、外界からの花粉を受け取ります。
ひげ内部は中空の管状で、花粉が柱頭に付着すると発芽し、花粉管が子房内の胚珠まで成長します。この受精過程は通常24時間以内に完了します。
国際トウモロコシ改良センター(CIMMYT)の栽培マニュアルによれば、ひげの本数は品種や栽培条件によって異なりますが、平均で400〜600本程度とされ、これはそのまま理論上の粒数に相当します(出典:CIMMYT)。
ただし、実際には全てのひげが受粉するわけではなく、気象条件や害虫、病害などの要因で受粉率は低下します。
下記は主な部位と役割の整理です。
部位 | 位置 | 主な役割 |
---|---|---|
雄穂(雄花) | 茎の先端 | 花粉を大量に放出する |
雌穂(雌花) | 葉の付け根 | 粒のなる部分を形成する |
ひげ(花柱) | 雌穂の先端 | 花粉を受け取り子房へ導く |
葯 | 雄花の先 | 花粉を収納し放出する |
苞葉 | 雌穂の外側 | 雌花と粒を保護する |
こうした構造を理解することで、開花期の観察や管理作業の判断が的確になり、最終的な収穫量と品質の安定につながります。
花びらがない理由

とうもろこしは、イネ科の中でも風媒に特化した花の形態を持つ代表的な作物です。風媒花(ふうばいか)は昆虫や動物を媒介とせず、風によって花粉を運びます。そのため、花びらは昆虫を引き寄せるための色や形、香りを備える必要がありません。代わりに、受粉効率を高めるための構造に特化しています。
花びらを発達させるには光合成で得たエネルギーを多く消費しますが、とうもろこしはそのエネルギーを花粉の生産量や放出効率、雌花の花柱の長さや表面積の確保に振り向けています。雄花は株の頂部に形成され、高所から花粉を風に乗せて広く散布しやすくなっています。雌花は株の中段に位置し、落下・飛散する花粉をひげで効率よくキャッチします。
農学的な研究によれば、とうもろこしの雄花は1株あたり2,000万粒以上の花粉を放出するとされ(出典:農研機構 作物研究部門)、これは他のイネ科作物と比較しても非常に多い数値です。この圧倒的な花粉量こそが、花びらを必要としない代わりに受粉を確実にするための進化的戦略といえます。

偉人にまつわる話

とうもろこしの花は、食用作物としてだけでなく文化的・歴史的にもさまざまな記録に登場します。
日本の史料
日本の史料には、戦国武将・織田信長がとうもろこしの雌花のひげを観賞したという逸話が残されているとされます。信長は派手な装飾や珍しい植物を好んだ人物として知られていますが、淡く光沢を帯びた絹糸のようなひげの美しさに注目したという伝承は、雌花の鑑賞価値を示す興味深い例です。
中南米
とうもろこしの原産地である中南米では、古代アステカ文明やマヤ文明の神話にもとうもろこしの神が登場します。アステカではセンテオトル、チコメコアトルといった神格がとうもろこしを司り、豊穣や生命の象徴とされました。
これらの神話は、とうもろこしが単なる食料ではなく文化や信仰の中心にあったことを物語っています。
文化的価値
現代でも、こうした歴史的背景や文化的価値が、とうもろこし花の人気や魅力を高める一因となっています。観賞用として栽培されるケースは稀ですが、その独特な形態と文化的背景は、農業や植物学を学ぶ上でも興味深い題材です。
とうもろこし花の種類と育て方
- とうもろこし 花が咲い たら行う管理
- 花の色と見分け方
- 雄花、雌花の違い
- 受粉後の育成と害虫対策
- まとめとしてのとうもろこし花の魅力
とうもろこしの花が咲いたら行う管理

とうもろこしが開花期を迎えると、栽培における重要な管理作業が始まります。雌花のひげが出始めるのは、雄花が花粉を出し始める時期と重なります。この時期の管理次第で、受粉率や粒の品質が大きく変わります。
ひげの色が黄緑色から徐々に褐色へ変化するのは、受粉が進行しているサインです。全体の色が褐色になった時点で、雄穂を切り取るとアワノメイガなどの害虫が雄花から雌穂に移動する経路を断ち、被害軽減につながります。この処置は特に有機栽培や農薬使用を最小限にした栽培において有効です。
開花期はまた、とうもろこしの養分需要が最も高まる時期でもあります。農研機構の試験結果によれば、開花期から収穫期にかけては窒素、リン酸、カリウムの吸収速度がピークを迎えます。
このため、適切なタイミングでの追肥と十分な潅水が欠かせません。乾燥状態が続くと粒の充実不足や甘味の低下が起こるため、土壌水分を安定させることが鍵となります。
さらに、背丈が伸びた株は風による倒伏のリスクが高まるため、支柱の設置や土寄せによって安定性を確保します。特に台風や強風が予想される地域では、この対策が収穫量を守る重要なポイントとなります。
タイミング | サイン | 目安の対応 |
ひげの出始め | ひげが黄緑でみずみずしい | 受粉開始、潅水を切らさない |
受粉進行中 | ひげが徐々に褐色化 | 追肥で養分を補う |
受粉後 | ひげが褐色で伸びが止まる | 雄穂を切り取り害虫リスク抑制 |
収穫前 | ひげの褐色化から20日~25日 | 朝のうちに収穫し甘さを保持 |
以上の流れを押さえると、粒の揃いと食味の両立がしやすくなります。
花の色と見分け方

とうもろこしの花の色は、雄花と雌花で異なる特徴を持ちます。雄花(雄穂)は品種や生育条件によって色の幅があり、一般的には淡い黄色から黄褐色、さらに紫褐色を帯びるものまで存在します。特に紫褐色の色素はアントシアニン系の色素によるもので、高地や寒暖差の大きい地域で発色が強くなる傾向があります。
一方、雌花のひげは出始めの頃は黄緑色または淡黄色で、受粉が進むにつれて褐色へと変化します。この色の変化は、ひげ内の花粉管伸長と子房の受精進行を反映しており、農家はこの色の変化をもとに受粉状況や収穫までの日数を推定します。
農研機構の観察指標によれば、受粉後15日ほどでひげの大部分が褐色化し、その後5〜10日で粒のデンプン蓄積がピークを迎えるとされています。(出典:農研機構 作物研究部門)
また、とうもろこしの粒の色は花色とは直接関係がありません。粒の色は主に遺伝的要因によって決まり、黄色粒種、白粒種、そして黄色と白が混ざるバイカラー種などが存在します。
畑での観察では、雄花と雌花それぞれの位置と色の変化を記録しておくことで、品種特性や開花期の気象条件との関係を後から検証することが可能です。
雄花、雌花の違い

とうもろこしの雄花と雌花はその位置、形態、機能において明確な違いがあります。雄花は株の最上部に位置し、穂状に多数の小花が集まって構成されています。
開花期には葯(やく)が裂け、大量の花粉を空気中に放出します。花粉は風に乗って雌花へ届き、受粉が行われます。
雌花は葉の付け根付近に形成され、苞葉に包まれた状態で成長します。先端から伸びるひげ(花柱)は、一本ごとに内部の子房とつながっており、そこに花粉が到達することで受精が成立します。
とうもろこしは多くの品種で「雄性先熟(ゆうせいせんじゅく)」の性質を持ちます。これは雄花が雌花よりも先に成熟して花粉を出す性質で、このタイミングのずれにより自家受粉を避け、他株からの花粉による交配を促進します。
この他家受粉の促進は、粒揃いや遺伝的多様性を確保するうえで重要な役割を果たします。
以下は雄花と雌花の主な比較です。
比較項目 | 雄花 | 雌花 |
---|---|---|
位置 | 茎の先端 | 葉の付け根 |
見た目 | ふさ状の穂 | 長いひげ |
主な役割 | 花粉放出 | 花粉受容と粒の形成 |
観察の要点 | 晴れの日に粉が落ちる | ひげの色変化で成熟確認 |
栽培上の注意 | 受粉後は切り取り可 | ひげを傷つけない |
このような構造の理解は、開花から収穫までの管理判断を明確にし、安定した収量と品質の確保に直結します。
受粉後の育成と害虫対策

受粉が完了すると、とうもろこしは粒の肥大と糖分の蓄積という生育の最終段階に入ります。この期間は特に水分と養分の供給が重要で、乾燥や肥料切れは粒のしぼみや甘味の低下を引き起こします。
表土が乾いたら一度にたっぷりと水を与え、必要に応じて追肥を行うことが推奨されます。窒素は粒の充実、カリウムは糖の蓄積を助けるため、バランスの良い施肥が求められます。
害虫ではアワノメイガが代表的で、幼虫は雄花から雌花へ移動して粒を食害します。農研機構の害虫管理データによると、雄穂が出始めた頃から7日おきに2〜3回の防除を行うことで被害が大幅に軽減されます。

また、受粉後に雄穂を切り取ることで幼虫の移動経路を断ち、薬剤散布と組み合わせることで防除効果が高まります。
さらに、風の強い地域では倒伏防止のための支柱設置や土寄せも重要です。台風シーズンに向けて物理的な補強を行うことで、収穫直前の株倒れによる被害を防ぐことができます。
加えて、防鳥ネットの設置も収穫期前後の被害対策として有効です。
まとめとしてのとうもろこし花の魅力
- とうもろこし花は一株に雄花と雌花が分かれて存在し受粉効率を高めている
- 雄花は茎の頂部に位置し大量の花粉を放出することで広範囲に受粉を促す
- 雌花のひげは一本ごとに粒と直結し受粉成功率が収穫量に直結する
- 花びらが目立たないのは風媒花として進化した結果である
- 雄花は黄色から紫褐色まで品種や環境で色幅がある
- 雌花のひげは受粉が進むと褐色化し成熟の目安となる
- 受粉期の水分と養分管理は粒の充実と甘味保持に不可欠である
- 雄性先熟の性質により他株との交配が促進され粒揃いが向上する
- 雄穂の切り取りは害虫の移動を抑える実用的な防除手段である
- アワノメイガ防除は雄穂出現期からの計画的散布が効果的である
- 風通しの確保と間隔管理が受粉率と病害虫抑制の両方に有効である
- 支柱や土寄せによる物理的補強が倒伏防止に直結する
- 文化や歴史的背景がとうもろこし花の魅力を一層高めている
- 雌花のひげの色変化は収穫適期を見極める重要な指標である
- 開花後およそ二十日前後が収穫適期の目安となることが多い

